【非常に難しい乳首問題】

 一応の再建が”完了”したのち数ヶ月、バッグはもう動く気配はなくなりました。
 寒いとなんだかツレる、って感じはあるにせよ、以前みたいに「ぐるっと回って」しまったりとか、「位置が上がって」しまったりとかしなければ、これでOKということです。これでもうほんとにほんとに落ち着いたのね。

 しかしですね。この時点で、実はまだ大きな問題が残っているのです
 これが解決しないと、いまいち「NEWおっぱい完成!」という気分にならないのよね。

 それはご存知(何がご存知なんだか)乳首問題です。
 乳首、もうついてはいるのですが、これがいかにも不完全なんです。

 いや、これで満足してしまうならしてしまっても別にかまわないんだけども・・・・。欲を言えばキリがないから。
 でも、自分としては、やっぱりまだ不満です。

 まとめてふりかえってみましょう。

 あたしの再建側の乳首と乳輪は、右側(健康な側)の皮膚を移植する形成手術によって作ってもらいました。
 乳首(乳腺が入っている組織ごと)を半分切り取ってこっち側に移して、乳輪の皮膚もまあるく切り取ってそっちに縫い付けて・・・・という、いわば「忍法分身の術」みたいなことをしてひとつの乳首を二つにしたわけですね。

 それで、これは生きた皮膚ですから、生着がうまく行った部分とあまりうまく行かなかった部分ができてしまったわけです。
 丸く作ったはずなのに、丸くついていない
 カケがあるのです。
 なんと言ったらいいのか。初期のミッキーマウスの目玉といったらわかるかな?「パイカット」って呼ばれている、丸いパイを一切れ切り取ったような形になってしまっているのよ。

 こういうことになる可能性は説明されていました。何せナマモノだから。工業製品のようにはいかないでしょう。
 移植した乳首が縮んで小さめになるとか、そういうことも聞いていました。
 だから、これからさらに形は変わっていくのかもしれません。

 加えて。
 色がどうにも薄いです。
 どうやらあたしの皮膚は、「ケガをすると白っぽくなる」傾向が強いのらしい。

 どこか怪我をして縫ったことがある人はわかるでしょうが、縫った傷跡は皮膚の質がちょっと違っていて、色素が抜けて白っぽく浮くことがあるでしょう?ならない人もいるけど、あたしの場合はそれがはなはだしいわけ。
 こういうのは、ケロイドになりやすい人と同じで、「体質」なのだと聞かされました。きれいに治る人と、傷跡が残りやすい人がいて、「やってみないとわからない」のだそうで。

 で。皮膚の移植、と言ってもそれは要するにケガと同じですから、あたしの体質の都合で色素が抜けるということが起きてしまったわけです。
 乳首なのに色がピンクというかあいまいです。乳首のくせに”やや色白”ってのは、けっこう寂しいものがあるんですよ。はい。
 中にはまともに定着した場所もあるから、そこだけ乳首らしい色してて、迷彩柄状になってるし・・・・・うううううう、このように詳しく書いているうちに落ち込んでくるんだわよ。
 
 形成のクリニックでも、これだとやっぱり仕上がりに不満があるでしょうねえ、という空気でした。
 決して「自信作です!きれいにできちゃいました!」という雰囲気ではなかったのです。
 だからあたしが贅沢を言っているのではないと思いますわ。
 それで。修正をすることを考えるとすると、その方法は「刺青」ということになります。
 もともとの乳首の色に近いインクを調合して、刺してもらうのです。

 あたしはそれを決心するまでに、少し間を置くことにしました。

 つづく。