【病室で絵を観るお客さんたち】

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 入院中に展覧会の準備を始めた、って話のつづき。
 
 入院中、というのは、一日に1回とか2回とか、執刀医が様子を見に来てくれます。(だいたい足早にやってきてばたばた帰って行く、という・・・いつも忙しそうな感じでしたが)
 そのほかにも一定の回診があり、”乳腺外科ツアー”とあたしがこっそり呼んでいた、たくさんのお医者さんがぞろぞろ一緒にやって来るやつもあります。
 看護士さんたちも、血圧や熱をはかる、尿量の記録を取りに来る、クスリを渡してくれる、などなど、病室にはちょこちょこ常に”訪問者”があるわけです。
 お見舞いに来る人や家族を別にしても、”お客さん”ってわりと多いのね。


  で。
  絵なんか描いていると、訪問者がだんだん絵を見るようになって来るんですね。
 入ってくるなり「わー、色がついたー」とか「こんな風になったんだー」とか、ひとしきり見る。
 それからおもむろに「傷見せてください。はい順調ですね」みたいな。
 逆だろう!傷が先だろう!あはははは。

 傷の治り方は問題なかったので、たいして心配されてなかったということもあります。ドレインが取れないだけで。

 熱っぽい時はあまりがんばらずに寝てました。長い昼寝というのは極めて”患者らしい”行動です。
 やることが他にありませんから、たとえ昼寝つきでも作業はかなり順調に進みます
 いつもと同じように夜更かしはしてたし。

 絵がどんどん変わっていくのを段階的に見るのは、面白いことだったのかもしれません。
 1枚ずつ描いていくのではなくて、複数並べてそれらが同時進行で変わっていくのですが、最初ざーっとしているのが、だんだん細かくなっていったり、モノによっては色ががらりと変わったりします。

 この入院は10日間だったのですが、3日目ぐらいから描きはじめて、結局A4の大きさのアクリル画を5枚つくりました。

 4日目から、差額ベッドがない部屋に移れたのはすんごくラッキーなことでした。(施設にはそんなに深刻な差はありません。同じように個室で、大変快適です)
 1日3万円のドキドキから開放されましたから、ドレインがなかなか取れない状態に関してもナーバスにならずに済みました。
 
 2006年2月。”下界”ではインフルエンザがかなり流行していました。家に帰って万が一感染したら体力も奪われるし、心配だというので、「もうおまえ、そこに入っておれ」と夫は言いました。退院の日は迎えに来るために、彼は仕事を調整しなけりゃいけないのです。

 主治医は、何日目かに、「どうせなら、この辺の壁に飾って展覧会にしたら?」などと言っていました。
 あのまっさらな壁に釘打っていいんでしたらやりますけどもねー。本気にするよ。あたしゃ。

 冗談抜きに、絵を掛けるためのレールを天井に設置しておいたらいいのに。長期入院の人などにはいいアイディアだと思います。聖路加は緩和ケアにも力を入れていることだし。
 絵のある入院ってのは、いいよー。