乳首のナゾが解けた

 2週間の間、乾かない乳頭部分にせめて洗ったスポンジ・ドーナツをあてて保護して、診察の日は来ました。

「乾かないんですよね。ずっとじくじくしているんですが」
 それに対し、ドクターのお言葉は、「みなさん、このぐらいですね。どうしても」でした。

 とりあえず安心していいようです。みんな移植した乳首の皮膚はなかなか正常な状態にはならないのですね。そんなに簡単じゃないわけです。
 こんな風に擦りむいたひざ小僧が繰り返し繰り返しむけちゃっているような感じで何週間も過ごすということらしい。

 ”赤むけ問題”の疑問が解決したので、あたしは思い切って一番気になっていることをきいてみました。
「乳首の位置なんですが・・・ちょっと下過ぎませんか?

 ドクターは、その時初めて、驚くべき事実(あたしにとっては)を明かしてくれました。

「今、バッグが回ってしまっているんです。厚みのある方が、上のほうに来てしまっているでしょう」
「ええええ?」
 
 あたしの胸に入っているシリコンバッグは、LXとかいうタイプで、上の方が薄く、下に向かって丸みがある、いわゆる”釣鐘型のおっぱい”の形をしています。部分的に見たらば、一番厚みがあるぐらいの形なわけです。
 それが、本来上に来るべき部分が下になり、要するにひっくりかえってしまっていたのです。

 「この間の手術の時に気が付いていたのですけれどね、手術前に動揺させてはいけないと思って、黙っていたんです。バッグの位置が正常に戻れば、乳首の位置は上がりますから、これは想定内なんです」
「上がるって・・・ああ、下に厚みが来れば下が伸ばされてということですか?」
「そうです」

 がーーーーーんんん。
 それせめて抜糸のときに言ってくれてなくちゃあ・・・・。
 この2週間の不安とその”動揺”と比べるとどうよ?
 だいいちあたしゃ驚きはするが、「動揺」とかは無縁の性格をしてると思うが・・・。

 でも、これでナゾが解けました
 この、前よりもぼん、と唐突に膨らんでしまっているように見えていたのも・・・はっきり言って見えてたんじゃなくて、ほんとにそうだったわけですね
 
 どうもシリコンバッグというは必ずしもおとなしく収まっているわけではないらしいのです。
 バッグの表面にはざらざらしたテクスチャーが付いていて、滑らないように作ってあるのですが、接する皮膚(の裏側)のほうがつるつるしている場合があり、それで動いていってしまう、ということらしい。
 動く、ということはあらかじめ聞いて知っていたのですが、乳頭手術の3ヶ月前の診断の日には「大丈夫、ずれてませんね」と言ってもらえていたのです。

 マッサージをしているうちに上下さかさまになってしまったということ・・・?となると、マッサージのしかたに何か問題があったのでは・・・?

 考え込むあたしに、ドクターはさらに説明をしてくれました。

 またつづく。