デザインしながらおっぱい談義

 前回の続き。
 
 回復室の壁にはブルーのロールスクリーンが下ろせるようになっていて、「デザイン」のあと、その前に立って写真を撮影することになります。
 手術前、手術後を記録に残しておくわけですね。

 例によってドクターがフエルトペンで胸にあれこれ線を書き込んで、しるしをつけてくれます。これがデザイン。
 左右の位置や高さ、大きさのあたりをつけるわけです。
 切る場所のほか、左右対称に近づけるために体の中央がどこか、とか、そういう補助線もたくさん引きます。
 
 ヌードデッサンの勉強している時にもこういうことやるよな、なるほどー、などと感心します。(モデルの体の上に描くわけじゃないけど、絵の上にそういう補助線を引いたりはするのです)

 のびたり縮んだりするという手術後の”乳首事情”については、このときにお話をききました。
(過去エントリー『乳首の事情』

 その他皮膚を取られるほうは、少し位置が上がるんだそうで、(そのように取るのでしょう)それに合わせて移植されるほうの位置が書き込まれます

「もう少し内側ですね」などと修正も施されます。その時は色の違うペンを使っていました。

 ちょうど乳首ぐらいの大きさに丸く切った、透明のステッカーのようなものが乳首の位置に貼り付けられました。

 あっという間に「デザイン」は出来上がっていきます。
 その間あたしは色々とおっぱいについてしゃべろうと努力しておりました。

「縄跳びをしても作ったほうの胸だけ揺れないんですよねー」
「ああそうですね。寝ても平らにつぶれないし」
「つぶれませんね」と、言いながら仰向けでもイタリアの女優みたいに(この喩えには根拠なし)丸く盛り上がった自分の胸(ただし片方だけ)という図を想像します。

先生はついでに色々と教えてくださいました。
「でもこちらは移植した分、少しゆるみができて、そのぶんたわみますよ」
「え?どういうことですか?」
「切開して、乳輪と乳首の分、皮膚を足すわけだから・・・」
「ああ、その分皮膚の面積が増えるわけですね」
「そうです。ゆるみが出て柔らかい感じになります」

 そうならいいな、と思いました。
 実際エキスパンダーであんなに伸ばしたはずの皮膚ですが、マッサージをサボると、てきめんに縮んでくるような感じがするのです。

「何だか皮膚は小さく縮もう縮もうとしているような感じがするんですよね」
「あ、わかりますか?その通りなんですよ」とドクターは言いました。

 マッサージは、その縮みを防ぐ意味もあるようです。
 特に夏より冬は縮む傾向があるのだとか。

 そういう話をしているうちに準備は整い、写真を撮られて(首から下だけ)、手術室からお迎えがきて、さて、いよいよ麻酔です。

つづく。