手術前にさまざまな不安を解消する

  この乳首を形成する手術も、シリコンバッグを入れるのと同様、日帰りでできます。
 手術時間は30分ぐらい。

 しかも乳首だけだから、部分麻酔で、回復の時間もいりません。
 特に絶食とかもしなくていいのです。
 終わったらお着替えしてはい、お帰り、という手軽さ。
 
 しかし、ほんと?
 あたしは説明を聞いても手術がそんなに簡単だ、というイメージがわきませんでした。

「前回の日帰り手術、シリコンバックに入れ替えた日に、あたし帰りの電車で昏倒したんですけど・・・」
 あの時の悪夢がよみがえります。
(過去エントリー『日帰り手術は甘くなかった』

 不安に思ってしつこく質問しましたが、「今回は大丈夫です」と言われました。
 部分麻酔の負担は軽いものなのだそうです。
 っていうか、全身麻酔はやっぱりかなり体にこたえる、ってことでしょうね。

 回復室兼準備室で、パンティのほかは全部脱いでアクセサリーもはずし、ピンクのタオルのムームーみたいなやつに着替え(袖は通さないで胸のところでゴムをとめておく)頭の毛はキャップに隠し、スタッフの案内を待ちます。

 担当のスタッフが身支度の確認などをしてくれます。

 あたしは、胸の谷間の皮膚にぽっつん、とおできができていること、それは乳腺外科の担当医に見せたときに「経過観察を要する」ってことになっていることを思い出し、それを告げました。
「でも、場所が違うから乳首はやってもらっちゃってOKとのことです」と、担当医の言葉をそのまま伝えます。

 あと、今までマッサージしてきた中で不安に思っていることを言ってみました。
「マッサージはまじめにしていたんですけど、どのぐらい柔らかくなるものなのだか、それがわからなくて・・・。どの程度になればOKなのかってことですが・・・」
 
 スタッフはそれに応えて胸を触ってみながら、「だいぶ頑張ってくれたようですね。いい印象です」と言いました。
 
 いい印象?
 これは形成の世界の専門用語かなんかですかね?
 もしかしたらそのようにあいまいに言うように指導されているのかもなあ、と想像しました。
 あんまりはっきりと努力の足りないことを指摘されたら患者の気持ちがめげるでしょうから。
 
 頭のなかで「いい印象いい印象」と何度かその不思議な言葉を咀嚼してみます。
 ま、悪くないみたいだからいいことにしよう。
 たとえ「悪い印象」という言葉は存在しないのだとしても、これまでのところに異常はないことは確かでしょう。

 正直、当日になって、たとえば「えーっ、まだこんなに硬いままなんですか?普通はもっと柔らかくなるんです」とか、驚かれたりしたらどうしましょう、と思っていたんですよ。
 3ヶ月のマッサージ期間というのは、かなり「閉じた世界」なんで、色々悪い妄想もわくのです。(あたしみたいなノーテンキですらね)
 
 次にドクターの到着を待ちます。

 ドクターは入ってくるなり「おできはどこですか?」ときいてきました。

「これです」
「ああ、何かできてますね」
「大きくなるようなら検査するって言われてます」
「あ、触らないでね。こういうのは触ると大きくなるんです。忘れちゃってください
「はあ・・・?」

 忘れちゃう?
 そういえば何かの本に病は病であることを忘れれば治る、とか書いてあったなーなどとぼんやり考えます。

 ”忘れながら経過観察”ってのはちょいと複雑ですが、どんな病気もそういう一面はあるなあ、と思います。
 癌も、忘れながら再発予防を考える、みたいな状態なら、体調がいい証拠でしょう。

 このように色々と不安なことを質問にしてお話しながら、ドクターの作業は進んでいます。
 形成の世界の言葉で「デザイン」と呼ばれる、胸の皮膚に直接マーカーペンで切る場所などを描きこんでゆく作業です。

 つづく。