個室でよかったこと

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

 あたしの病室の窓からは向かいの聖路加タワーが見えました。日当たりもよかったように思います。

 あたしを送り届けた夫の感想は・・・「何もこんなにいい部屋でなくてもいいから、安くしてくれないかなあ」でした。
 まあ、本音ですね。
 
 でも、お金がかかるとか、そういうことはとりあえず置いておくとして、「なぜ個室なのか」というところには、おそらく病院の医療に対する哲学が現れているのじゃないかと思います。

 快適ってことは、「自分流」をどのぐらい我慢しないでいられるか、ってことにつながるでしょう。
 自分らしくいることが、治療にもいい影響を及ぼす、(あるいは入院で我慢することが多いと治療に悪影響を及ぼす)ということがある、と考えているのだと思います。

 あたしなんかは非常に宵っ張りで、遅くまで何か書いたり読んだりすんで、ルームメイトがいたら、迷惑をかけるかと思います。
 あと、ふと気が付くと歌を歌っている、というぐらいにうるさいしねー。
 はっきり言って歌声でかいです。すみません。

 プライバシーも大事ですが、他人から何か余計なストレスをかけられない、他人にストレスを与えないで済む、という安全も大事なことです。

 あとね、やっぱり病気ですから、気が滅入ったり、不安になったり、イライラしてたりするわけです。早い話が、精神が不安定ですよね。

 ちょっとしたことがきっかけでどわーっとか、じわーっとか、涙が出てくることだってあります
 そういう時、絶対ひとりのほうがいいんじゃないでしょうか?

 病室では携帯電話の使用はOKでした。
 あたしは友人たちにPHSでメールを送ったりしてました。
 さすがあたしの友達、時々ぎゃははははと笑えるような返事をくれるわけですが、そういう時も、個室ですから「ぎゃはははは」と笑ってOKです。
 ”へんな人”とか思われる心配はなし。独りごと言ってたっていいんだから。ありがたいです

 あたしは入院翌日の朝一番の手術ってことになっていました。
 たぶんそのせいだと思うのですが、前日に超音波エコーを見る部屋に呼ばれ、どこを切るのか、という地図みたいのを胸に書かれました。
 手術を受けたことがある人は知っていらっしゃるでしょうが、あの青いマーカーペンみたいなやつでね。

 しこりがある場所に、何だか独特の方法で点線だの実線だの斜線だので書き込んでくれたので、左胸にはアニマル柄みたいな模様ができました。
 
 あたしはそれを携帯写真に撮りました。
 古い機種の、ちゃちい、小さな写真ですが、それでもその時にしか撮れない写真です。

 その写真を添付して、夜中に家にメールしました。「胸にこんな模様を描かれたぞ!」とちょっと”自慢”気分だったのですが、娘から即「キモイ!」という返事が来ました。

 はー。”失言教育”ってのをしないとならんな。こいつには。
 手術を控えて不安な患者にキモイとは何なんだよ。キモイってのはよー。全く。

 「こんな失礼な娘を残して、ママはまだ死ねない!」と強く心に決めたりしたわけですが・・・まあ、そういうことも個室だからできたのです。