再建にこだわるあたし7

●フローチャートを作って考えてみる 
 何がどうなる可能性があるのか、頭がこんがらがりそうだったので、あたしたちはフローチャートを作ってみました。


 だいたいこういうやつです。

 この図でもっとも大事な部分は、ドクターが勧める温存手術をしてもらったとしても、「形が不満足」で、なおかつ「これなら再建をしたほうがマシなのではないか?」と思われる場合を想定していることです。

 「形が気に入らなかったら、放射線をかける前に、やっぱり全摘してくださいってケースはありかな?」
 あたしは夫に言ってみました。おそらくそんなことを言う人はほとんどいないんだろうな、と思いながら。
 
 もしかしたら医者が気を悪くするかもしれない、とも思いました。
 せっかく温存をしてあげたのに、形が不満だから改めて切って、再建してくれ、というんじゃ・・・。

 夫は、再建が”マシ”なしあがりになるかどうかもわからない、かえってアンバランスになる可能性があるんじゃないか、と言います。

 その可能性もあります。
 だいたい、やってみないうちに比べることができないから苦しむのです。

 だけど、手術をする限り、アンバランスであることはもうずっとついてまわること
 どっちがマシかってことについては、複合的かつ総合的に考えなきゃいけない!

 まず、最初の手術でガンがすべて取りきれているかどうかは、切り取ったものを病理検査にかけなければわからないのです。
 温存手術が必ずしも一度で終わるとは限りません

 あたしの場合、4分の1を切り取ることがわかっていましたから、もしもそれ以上の追加切除があったら、まず満足のいく形は保てないだろうと予想されました。

 そのときはいっそ諦めがつきます
 よほどのことがない限り、追加切除があったら、もう全摘をするケースだろうな、と思いました。

 追加切除がなくて、ガンが一度で取りきれていた場合。
 なおかつ形もこれでいいと思える状態で残せた場合でも、放射線治療で色は変わり、美容的にはさらなる打撃が加わります。
 
 「放射線だけでも30万円ぐらいかかるんだよ。その分、再建にまわしたほうがいいんじゃないの?」というと、夫は
「この際、金のことはいいから。後悔しないようにしなさい」と応えました。

 そんな事言ったってなあ。ガンの治療は長いんだもん。
 長い間お金がだらだら出て行くんだから・・・・・。

 あたしは放射線治療のために週に5日病院に通う自分を想像しました。

 30日の間、だんだん皮膚が黒くなり、硬くなり、だんだん懐もさみしくなっちゃって、しかも再建の望みが絶たれてゆく、その可能性をあきらめてゆく、その時間を想像しました。

 その間にがんばっているおっぱいをいとおしみ、形がすこし(?)ゆがんでも色が変わっても、また再発しちゃう可能性が6パーセントあるけども、「自分のおっぱいなんだから」と受け入れていかなくてはなりません
 
 それは、自分にとっては、何だかとてつもなく自分らしくない時間に思えました。

 それが悪いわけじゃない。もちろんそれでいい人もいる。

 だけど、自分はもっとばっさりした、思い切った人間で、「別に自分のじゃなくたっていいじゃん。Newおっぱいだってさあ」と思う人間なんじゃないのかしら?

 だけど・・・・体験しないですべてがわかるほどの人間じゃない。

 一度、温存手術を受けてみよう。
 どんなものなのか体験するだけでも、自分にとっては大きなことだし。それでそのまま行く気持ちにならないとも限らない
 だって、ほんとに多くの女性が温存手術にこだわるのだから・・・・。

 それで、だいたいの方針が決まったわけです。

 あたしは自分が「あのー、これ、形が気にいらないんですけど」とドクターに言うかも知れない、そのシーンも想像しました。

 ううう。はっきり言って(言ってるけど)相当言いにくいたぐいのセリフだろうなあ。

 つづく。