再建にこだわるあたし8

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●結局どうなったか

 結局あたしはチャートの中にピンク色の○が示されている、その順序をたどることになりました。

 最初の切除で、ガンの組織は全部取りきれていなかったのです
 あたしにとっては、再切除を受けることイコール、「全摘して再建する可能性を考える」ということでした。

 では最初の手術のあと、おっぱいはどんな状態だったか?

実はかなりきれいな状態で残っていたのですよ。
 主治医は腕の確かな人だったのですね。

 少なくとも家族は、あれほどまともな形で、傷口もぜんぜん見えない状態で残るとは思っていなかったらしく、驚いていました。

 傷は乳輪に沿ってわずか数センチでしたから、まったく目立ちませんでした

 しこりの位置も、上側だったので、乳首の高さが右側とそろわなくなってしまう、ということはありませんでした。

 乳首より下に病巣があると、変形は目だってしまって難しい、どうしても乳首の高さがずれてしまうことがある、ときかされていました。

 乳首の位置は、美容的にとても重要です。ここさえそろっていれば、多少のアンバランスは目立たないともいえます。
 
 あたしは絵を描くので、そのことがよくわかります。人間の目が何をみているのか、ということです。
 左右のボリュームの違いよりも、まず乳首の位置が全体の印象を決めるのですわ。

 実際切ってみると、ガンは顔つきが悪く、思ったより広がっていたようです。
 この”顔つき”という言葉は面白いなあ、と思うんだけど、こういう言葉が実際使われるんだよね。

 顔つきがわるい、というのは悪性度が高い、と言う意味です。普通の細胞とかけ離れた形をしているほど「顔つきがわるい」度合いが高い、ってことになります。フツーの顔してない、って事だね。

 顔つきがよろしくないガンが思ったより居座っていたので、予定の4分の1より、さらに多く切除しなくてはならなかったとのことです。

 「だとすると、これは相当うまくいったほうなんじゃないかしら?」とあたしは思いました。

 もちろんごっそりとボリュームが失われていますから、片っ方と見比べたら、どう考えてもそろっていません。
 だけど、単独で見たら、「まあ、こういうおっぱいもあるんじゃない?」という感じでした。
 小ぶりで、少し平らなおっぱいです。

 鏡に映して横から見てみると、片一方だけ盛り上がりに欠けている様子が、何か「へたくそな絵みたい」に見えました。
 「こういうへたくそなデッサンするやついるよな。おっぱいよく見て描いていないの」
 あたしは美大の教室でやったヌードデッサンのことを思い出して、笑いました。(笑い事かどうかわからんが、いつもとりあえず笑う

 へたくそな美大生がうっかり描いちゃうような胸だよ、と言って夫にも見せました。
 だとしたら、”これで済むなら充分かも”の範疇なのでは?
 本当に本当にこれだけで済むのなら・・・・。

 入院はたったの3泊4日でしたが、回診に来る主治医以外の乳腺外科の医師たち(ツアーみたいにどんどん来る)はみんな、「ああ、傷きれいですね」とほめて(?)いました。

 そして、あたしはその温存した胸で、病理検査の結果を待つ間、2週間暮らし、このままずっとこういう胸で暮らして行くことを想像してみました

 でも。

 「残念ながらまだ切れ端にガン細胞がありました。乳首側です。もう少し切らなくてはなりません」
 病理検査の結果を、そのようにきかされた時に、あたしはもう半分以上、「ああ、もうこの胸とはお別れだ」と思ったわけです。

 だけど、主治医は「まだ温存でいけると思う」と言ったのです。

 つづく。