再建にこだわるあたし11

●乳ガン仲間のありがたさ

 全摘して再建するのか、このまま少しの追加切除を受けて温存した胸で暮らすのか、まだいまいち迷っているこの時期、あたしはwebで知り合った乳ガン仲間の人とお会いしました

 その人は同時再建手術を受けており、その鮮明な写真を、添付ファイルにして送ってくれたのです。
 実際に再建した胸を見たら、SYNDIさんも決心がつくかもしれない、と言ってくれました。
 彼女の胸は、温存では救えないことがはっきりしてたそうです。

 見せてくれるとまで言う人がいることに、あたしは感激しました。
 webで知り合った、メールのやり取りをしているだけの間柄なのに。
 いや、決してあたしは怪しい者じゃございませんけれどもね。
 
 でもだいたいおっぱい見せるなんて、はずかしいじゃん?
 普通ないでしょ?
 日本は温泉文化があるからそうでもないのか?
 いやいや、そういうことじゃないよ!
 ほかの患者の力になろう、という考えが神々しいのよ。
 めったにあろうとなかろうと、その考えがすごい。

 だって医者が見せてくれる写真だけじゃ、リアリティがないでしょう。実際の仕上がりを見てみたい、というのは、患者の本音なのです。
 できたら念入りに触ってみたいぐらいだ。(難しいけども)

 その日二人で初めて会って、食事して、ほんとにいろいろとおしゃべりしました。
 そのことだけで、本当に孤独感がうすれ、勇気がわいてきました

 彼女はあたしがその胸を、指でちょっと押してみた時にも、怒ったりしませんでした。
 あたしはその時学校時代のことを思い出しました。
 よくロッカー室で、友達があたしの胸を指でつついたりしてたな、って。

 今じゃ自分以外誰も見ない(?)バストだけど、女子も(たぶん男子もね)わりと注目してたじゃん、ということを思い出したのです。
 そうよ。胸って見る人は見てるわよ。顔の下の、すごく目立つところにあるんだもん。

 ノスタルジックな気分であって、それは病気に向き合う現実とはかけ離れていたけれども、それでもなんだか幸せな気がしました。
 おっぱいに歴史あり、ってところです。

 食事が終わって喫茶店でさらにしゃべり倒します

 彼女もあたしの主治医が、「今の温存した胸でも、再建したのと同じぐらいの仕上がりだ」とまで言ったことには驚いていました。

 あたしは茶目っ気を出して、「見る?」と言ってセーターを引っ張ってみせました
 術後なので、ワイヤーのあるブラは禁止されていて、ユニクロの(1000円の)柔らかいブラジャーだったのですが、それも引っ張れば伸びます
 一瞬、彼女の位置から、胸が覗けたと思います。
 「あ」と彼女は言いました。

 彼女は、冷静に言ってくれました。「形成の先生によく聞いてから決心したほうがいい」と。
 全摘をすると、鎖骨の下にある乳腺も切り取りますから、「ここがふっくらすることはなくなる」というのです。

 今、彼女が言っていたことがよくわかります。
 その時点で、あたしの鎖骨の下、乳房の上側は、皮膚と脂肪に包まれてふっくらと残っていたのです。
 今現在は乳腺と脂肪ががそぎ落とされたために、胸筋が皮膚のすぐ下に露出しています。つまりへこんでいるのです。

 その部分は再建手術では取り戻せないから、どちらがいいかは簡単には決められない、ということです。

 あたしはその日彼女に深く感謝して、別れました。
 形成のクリニックで、冷静でいられるだろうか?とちょっと心配でした。

 この項、まだつづく。