再建にこだわるあたし5

●しかしやっぱりいつでもできるわけじゃないのだった

 「再建はいつでもできる」と信じたいのはやまやまなれど、医者が、それも自分の主治医がこれだけはっきり言っていることを無視して、信じたいように信じる・・・わけにはいかないよね。
 そんなのってちょっと頭悪すぎだもんな、とあたしは思い、さらに人に聞いたり、本を調べたりしました。

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 主治医にも何度も質問しました。
 実際に放射線をかけた皮膚というものは見たことがありませんし、ためしに体験してみるってわけにもいかないのですから、しつこく聞きまわるしかありません

 結論はこうです。

 やっぱり放射線を50グレイもかけたら、皮膚はのびなくなるのです

 だけど、中にはそこまできちんと放射線治療を受けていない人がいて、それが「放射線をかけたあとでも問題なく再建ができた」人だったのだろう、と考えられます。

 しかし、温存手術をしていながら「きちんと放射線治療を受けていない」ことは、それはそれで大問題なのではないでしょうか?
 
 日本の乳ガン治療にはばらつきがある、標準治療を受けていない人も数多くいる、という話は聞いていました。

 放射線をどのぐらいかける必要があるか、について、聖路加ではエビデンス(証拠)の裏づけがあった上で決めているのだと言っていました。
 それが50グレイという量です。週に5日間、30回ほども病院に通って、少しずつ少しずつ照射してゆく治療・・・。
 これを受けることで、再発率は6パーセントにまで減らせる、という統計があるのです。
 そのかわり、これだけがっちりかけたら、皮膚の汗腺は死に、柔らかさは失われるのですね。

 年間何百という数の乳房切除手術をしている病院の治療方針がそれなのですから、これに従うのが患者として正しい選択でしょう。

 違う病院の医師の答えがこれと食い違っているのは、受けている治療の差でもあるのです。
 なぜ答えが二つに割れるかと言ったら、理由はそこにしか求められないな、とあたしは考えました。 (これはあたしの判断なので、実際の患者さんはご自分で調べた上で判断してください。治療方針その他について、これがすべてであると言うつもりはありません

 ともあれ。再建の望みが残ったとて、再発防止の治療が最大限受けられないのでは本末転倒です。  

 あたしが質問のメールを送ったときに、「できます」と答えをくれた医者は外科医で、放射線科医ではありません。  放射線治療の影響が、一律であるわけがないのです
 量も、かけ方も、聞かないで、「放射線をかけたあとでも再建できます」とは、いうべきではなかったのですね。

 これで、あたしはまた振り出しにもどり、自分がどんな選択をしたい人間かを、もう一度じっくり考えることになりました。

 同じころ、放射線治療を断った女性の話を聞きました。再発のリスクは承知で、そういう決心をする人もいるということです。この人は10年経っても再発はなかったそうです。

 また、手術を受けた病院に放射線科がなくて、遠いところには通いきれず、受けたい放射線治療が受けられずにいる人の話も聞きました。
 彼女は再発がみつかり、がっかりしていました。

 さらに、放射線科がない、という理由から、温存できる胸を全摘するという地方病院のケースも噂に乗って聞こえてきました。

 あー、どうするべ?自分。  手術の予定が近づいていました。

 つづく。