秘密兵器の使い方

 乳頭形成手術の抜糸の日に渡された秘密兵器というのは、厚さ1センチぐらいのスポンジを小さなドーナツのように切ったもの。

 これをですね、作ったほうの乳首にあてて、テープで留めておくのです。
 そうすると、ドーナツの穴のところに”できたての乳首”がハマるわけです。
「こうしておきませんと、ブラジャーなどに押されて、高さがつぶれてしまいますから」と説明されます。

 壊れ物を保護する、梱包材みたいなものですね。周りを要塞で囲って高さを守るわけです。

 今日からお風呂に入って石鹸で洗ってもいいけれども、洗い終わったらスポンジで乳首を保護して、眠る時にもはずさないようにといわれました。

 確かに、うっかりうつぶせに寝てしまいますと、まだまだ”ヤワな”乳首がつぶれてしまうような気がします。
 ではブラジャーはどういうものをするのかしら?

 抜糸までは大げさなガーゼと絆創膏が当たっている胸を、術後専用の柔らかいブラジャーで包んでいたのです。

「ブラジャーは引き続き柔らかいものをしておくのですか?」
「いえ、もうどんなものでもかまいません」

 スポンジの下にはやはり真ん中に穴を開けて丸く切ったガーゼを何枚かあててくれました。
「これは、まだじくじくしているからです。これからはなるべく乾かすほうがいいのです。下着に血液などがつくようなら、ガーゼをこのように切ってあててください。もう乾いて、大丈夫のようなら、当てるのはスポンジだけでいいです」

 説明しながら、サージカルテープの幅が狭いものを十文字にして、左の乳首の上に留めてくれました。
 十文字にすると、真ん中の穴がふさがって上から乳首が見えません
 これはどのように留めてもいいので、周りだけ留めて”視界”と”風通し”を確保してもOKなのだそうです。
 その方がよさそうです。乳首のてっぺんがテープに張り付いてしまうのも嫌ですし。

 健側も縫い目が残っています。これにもテープを貼ってもらいますが、こっちはスポンジは不要で入輪に沿って短く切ったサージカル・テープを放射線状に、少しずつずらしながら貼り付けるわけです。
 乳頭そのものは、移植のために切り取られているので、少し小さめになっていますが、作ったほうに比べると、ちゃんと傷がふさがり、もうだいぶ治っています

 テープの貼りかたにはコツがあって、乳輪の上側は、乳首に貼ってからちょっと皮膚を持ち上げるようにして乳首の外側に貼り付ける・・・つまりちょっと”吊り上げる”ように貼るのだと説明されました。
 それは、乳輪の上側は、乳房の重さで傷が引っ張られて裂けたり開いたりしてしまいがちだからだそうです。
「下側にはそういう事故はないのですけれど」と脅かされます。

 まあ、乳輪の縫い目が完全にふさがるまでは、テープで保護して、さらにブラジャーで持ち上げて、傷に重みがかからないようにすることとします。
 右側にもちょっとじくじくした場所がありましたので、そこは微妙に避けて、ぐるり、テープを貼りました。

 ブラをすると、スポンジの分だけシリコン胸には高さがありますから、そっちだけちょっときゅうくつ。しかも、何だか以前よりも胸の上側にボリュームがあるような・・・・?

 そのナゾは、さらにそれから2週間後の”点検”の日に明かされるのでした・・・・。このときに言ってくれてもよかったのになあ