調べ物というのは、「ほんとにそうなの?」ということでした。
本当に、温存をしたら、もう「再建はあきらめなければならない」のかどうか。
2005年10月にガンだってことが確定して、12月には手術することになっていて、それまでの間に温存でいくのかどうか決心することになっていました。
それまでの間に、人に聞いたり、本を読んだりしました。
その時点で目を通した本には、放射線をかけた後の再建は「できなくなる」あるいは「大変むずかしくなる」と、はっきり書いてある本はみつかりませんでした。(もう少しあとで見つかったけど)
どの本も、こういうニュアンスで書いてありました。
「再建はいつでもできるのだから、ゆっくり考えて、いい医者をみつけてからやればいい」・・・・・
もちろん、全摘をしてしまえば、放射線はかけないのですから、その後「いつでもできる」というのは本当なのです。
それから、自家組織を使う再建は、皮膚も正常な場所から持ってきますから、「いつでも可能」だといわれています。この意味でもこれは本当です。
問題は放射線をかけた場合に、自家組織ではなく、シリコンによる体に負担の少ない再建をする場合、です。
セカンドオピニオンをくれた先生のところにメールをして質問しました。
「仮に将来再建をするのなら、放射線をかける前に決心しないとならないと言われたのですが、本当にそうなのですか?」と。
答えは「再建に強くこだわる患者さんなら、僕は全摘します」というものでした。
強くこだわる患者さん?
あたし強くこだわる患者さんかしら?
もしかして、強くこだわるとかこだわらないとか、ぱっきり線が引けるものじゃないのじゃないかしら?
もともと温存手術がこれだけもてはやされ、広がってきたのも、女性が乳房が「あること」を大切に思うからでしょう?
再建の望みが絶たれることは、そもそもこの心情とおおいに矛盾するのです。
”大切に思うがゆえに再建の選択肢をなくしてしまう”、という・・・・これは相当に残酷な状況です。
もちろん、乳房を大切に思うことと、「再建にこだわる」ことは、イコールではありません。
”作り物”の胸ではなくて、あくまで自分の胸にこだわる人もいるでしょう。
バストが美容だけの問題だとは、あたしも思いません。
でも一方で美容にこだわるひとがいても不思議はないでしょう。健康な胸だって手術して整える人がいるぐらいなのだから。
でもそういう人だとしても、それがガンの手術という大きなプロセスを経て、実際に切られた体になってみなければ解らないことがあるかもしれません。
あるいはその時は嘆いても、その体で何年かを生き延びたら、考え方や感じ方は変わるかもしれないじゃありませんか?
おそらく、変形してしまった自分の体をいつくしむような気持ちになる人も大勢いると思います。
しかしあたしはどうなんだ?あたしは?
あたしは美容関係にウルトラスーパーこだわります、というニンゲンではないけれども、それでも変形した体を慈しむ心情をを持つようになる・・・・なんちゅー保証もどこにもありませんでした。
正直あたしが、手術を受ける前に、その後の自分の感じ方を想像するのは「無理!」でした。
さっぱりわかんない、その時になってみなきゃわかんない、というのが本音でした。
それでも無理にこんなことを想像してみました。
例えば温存をして、放射線をかけて、乳房は変形して、皮膚は硬く黒くなってしまったけれど、運良くその後5年なり6年なりを生き延び、再発もなく、自分の体もよくがんばったな、という気持ちになったとします。
そのことには感謝するでしょう。
満足しているかもしれません。
だけど、さて命が一安心となった時に、欲が出たりしないかしら?
ああ、このおっぱいが変形してしまったのは残念だな、なんとかしたいな、一生このままでいるのはいやだな、と。
放射線皮膚障害にはもちろん個人差もあり、2年もすれば色や柔らかさがだいぶ回復する人もいると聞きます。
だけど、あたしは皮膚が弱いことがはっきりしていますから、変色自体ひどい可能性もあるし、回復が遅い可能性もあるのです。(やってみなければならないけど)
そのことを疎ましく思わないでいられるかしら?
後悔しないでいられるのかしら?
あるいは、考えるのもイヤだけど、何年か後に再発してしまったとする。放射線をかけたのに再発してしまったら、また追加手術です。
なんとか「これぐらいなら我慢できるかな」と思っていた変形から、さらに大きく崩れてしまったとします。
それでも「もう皮膚がだめなので、シリコンで再建することはできません」という状況を、うらまないでいられるかしら?
つづく。