セカンドオピニオンをもらうため

 友人が紹介してくれた乳腺の医師がお勤めの病院は、千葉にありました。
 こちらは埼玉ですので、ちと遠い。

 たぶん通う事はできないね、と家族と話し合いました。
 だけど、どこか通える範囲のいい病院を紹介してもらうにしても、この医師に会いに行って、診断をつけてもらうことは意義があるように思えました

 友人に書き送ったメール報告はその医師のところに転送されており、それに対する返信ももらっていました。

 そこには、今現在の乳ガン医療事情の問題と、それに対する憤りが書かれあったのです。
 文面から正義感があふれ出ているような感じでした。

 弟が、「なかなか熱い人だね。ここまで言うなら信用できるだろう」と言いました。
 「電車で行ける範囲なんだから、多少遠くても行って来たら?」と夫も言いました。

 予約を入れたら、数日後。
 ええ?まだ紹介状をもらってないぞ。

 あたしは近所の病院の例の担当医の出勤日を計算しました。すぐ行って書いてもらわないと、間に合わないかもしれない。
 その日はセンセイの出勤日ではなかったのですが、外科の窓口に資料を揃える締め切りと、紹介状の表書きのことは知らせて来れるだろう。

 というわけで、すぐに自転車に乗って病院に行きました。
 ほんと、近くて便利。(もうさよならだけど)

 ともあれMRI検査まで、とんとんとん、と行けたのも感謝しています
 築地のガン研に問い合わせたら2ヶ月から3ヶ月待ちだと言われました
 ともかくもMRIに「あやしいぎざぎざ」が映ったおかげであたしは行動を起こせているのですから。

 セカンドオピニオンを取るのも予定の行動です。

 「この日までに紹介状と資料がほしいんです。用意できますか?」
 外科の窓口で看護婦さんに聞くと、
「紹介状を書く時間そのものはそんなにかからないでしょうから、大丈夫です。この日の朝までに必ず用意しておきますから、取りにいらしてください」といわれました。
 セカンドオピニオンについて、協力的な病院です。

 紹介状に書いてもらう病院と医師の名前を知らせる時、面白い事がありました。

 少し年嵩の看護婦さんが「この紙に書いてください」と言ってあたしが書くのを待っている間、「別の病院にいくんですか?その先生っていうのは、どこの大学を出ているんですか?」と聞いてきたのです。
 それは仕事上の質問ではなくて、そのおばちゃんの好奇心から出ている質問のようでした。

 まるで「この病院って信用できないの?どういう医者なら(どういう大学出てれば?)信用するの?」と聞いているような感じ。
 まるっきり世間話のノリで、しかも看護婦さんの方がちょっと不安そうな顔なわけです。

 あたしは「さあ。この先生の学歴などは知りません。だけど友人の紹介で、乳腺の専門家なんです」と言いました。「乳ガンの疑いがあるわけですから」そこで言葉を切って、あたしは周りを見回しました。

 そこは外科の待合室で、他の患者がうじゃうじゃいます。
 ”ニュウガン”という音をきいて、隣にすわっている中年のおじさんも聞き耳を立てているような場所です。
 全然プライバシーのないところでこんな話をしているのも変なものですが、古い病院ではよくあることだと思います。
 カーテンで仕切ってあったって、声は筒抜け、とか、そういうことも珍しくないわけで。

 聞こえたってかまうもんか、と思ってあたしは続けました。

仮に乳ガンだったとしたら、やはり専門の医師に見てもらいたいので。一般の外科の先生がすべての臓器の勉強をするのは大変でしょう

 おばちゃん看護婦さんはこれで引き下がりました。最後までどこか不安そうな顔で引っ込みました。
 ”患者さんのお世話をする白衣の天使”(?)というよりは、口コミ情報を集めている主婦みたいなノリと、ちょっと考えなくちゃな、といったやや深刻な表情。

 だれか親しい人がここの外科にかかってでもいるのかしら?
 
 つづく。