胸のしこりが見つかって、こりゃなんかでかいし、やな感じ、と思ったあと、とりあえず近所の、自転車でいける総合病院に行きました。
初診受付で「乳房にしこりがある」と言ったら、『外科』です、といわれました。この病院には『乳腺科』はなかったのです。
その場合は外科が担当になります。
ここで一通りの検査をしました。
マンモグラフィと超音波。
たいして待たされることもありませんでした。
病院は混んでいましたが、予約で1ヶ月待ち、などの極端なことはなかったという意味です。
画像で”あやしい”(要するに良くない感じのものが見える)というので、数日後にMRIの予約も入れました。
さらに1週間後、MRIの画像診断の結果、しこりの輪郭がぎざぎざしている(これもガンらしさのひとつ)と言われ、この時点で、あたしは「もうこの病院じゃないところでちゃんと診てもらおう」と決心しました。
もう、だいたいガンだろうし、ガンだったら医者も病院も吟味しなきゃならない。たとえこの人にガンじゃないって言われても、あんまり信用しないでもう一人医者を探して裏を取らなきゃ、・・・・と思ったのですね。
検査とその結果を聞くのに2、3回医者に会えば、「この人ダメ」というのはわかります。
その人が世間的に見てダメな医者かどうか、ではなくて、私的にダメかどうか、です。
麻酔かけられて、体切られる、という非常事態に関して、「すべてお任せします。医学のことはわかりませんが、あたしゃ”まな板”に乗りますんでよろしくお願いします」という気持ちになれるかどうかという問題。
こういう事を言うと、「女は感覚的、感情的なことばかり言って医者の実績なんか見ないんだから」とかいうヤカラがおるかもしれませんが。
そういう事をバカにしてはいけないんだよ。野性が鈍った動物はサヴァイヴできないんだからね。「イヤ」っていうのはもっとも野生が関与する感覚なんだよ。
「医者はいっぱいいるんだから、何もわざわざイヤな人に切ってもらわんでもいいはずだ」とあたしは思っていました。
この病院に来たのも、自転車で来れて、帰りにダイエーで夕食の買い物をして行けるからだし。
あとでこの病院の外科の年間手術件数とか調べておこう、(ちゃんと実績だって調べるさ!それで良くても考え直さないけど)とも思いました。
あたしは「この人ダメ」と思いながら、そのダメさイヤさを確認するかのように、質問を繰り出しました。
あたしは質問することが大好きです。
そして質問に対して的確に答える語彙がない人が大嫌いなのです。
言葉で論理が組み立てられない頭の悪い医者、絶対イヤ。
答えてる”つもり”になってて、こっちが「疑問が全く解消していないんですけど」という顔をしているのに気がつかない、気がついてもどうにもしない、人間的に鈍い人も嫌いです。
声が不明瞭な人は不快。
笑顔が全くないヤツもイヤ。
その医者はだいたいそれらがもれなく揃っておりました。
「これ、かなりあやしいわけですよね。次はどうするんですか?」
「まだ悪性かどうかはわかりません。細胞を針で取って顕微鏡で調べてみます」
「細胞を取ればわかるんですか?」
「それではっきりしない時は、もう一段太い針で組織を取って調べます。だけど本当のところは、切るまではわからないんです。組織のサンプルがうまく取れないこともあるし」
この、「切るまでわからない」というのがどういう意味なのか、この時にはあたしはよくわかっていませんでした。
というか、患者は最初何も知らないのがフツーだもんね。
切るまで何がどのように、どうしてわからないのか、ならば何がわかってどのようにするのが普通なのか、「調べなきゃ」とあたしは思いました。
この話じゃ何にもわからない。
切るまでわからないから、などといってとりあえず切られちゃったら大変。
「ともかく今までのところあやしいんですね。その場合次の検査は、しこりに針を刺して細胞を見るってことになるんですね?」
「そうです。普通そうします。今日、細胞を取ることもできますよ」
この病院の”取り得”は早いこと。
有名なガン専門病院に行ったらMRI検査まで3ヶ月待ち、などというウワサはよく聞いていました。
じゃあ、今日組織取ってもらって、その検査結果を持ってセカンド・オピニオンをもらいに別の病院に行けば効率がいいのではないか?
あたしはそう思いました。
それで、針を刺して細胞を取ってもらったんですが・・・。
つづく。