おっぱい建設中

 あたしは、『左乳房全摘出同時再建』という手術を受けております。今年の1月末のことです。

 『全摘出』というのは、乳腺を全部切り取るという意味です。乳癌は乳腺にできる癌だから、それを全部取るわけ。
 
 『全摘』の反対語はいわゆる『温存』。
 癌のある部分だけ切り取って、あとの部分はなるべく残そうというのがこれです。

 あたしは一回目の手術ではこの『温存』をしてもらいました。癌の部分だけ切り取ってあとは温存し、すこし小さめのおっぱいになってたわけです。

 だけど、切り取った部分を病理検査・・・要するに顕微鏡などでじっくーり見た結果、「残念ながらまだ切り残しがあります」ってことになって、その時に全摘手術を”選択”したのですわ。

 では『同時再建』とは何か?
 癌のある乳房を切り取る時に、ついでに再建手術の”第一段階”をやっちゃうのよ、という手術です。

 全部取っちゃったら当然胸は平らになってしまうわけで、あたしとしては、それはやっぱりイヤだからふくらみを作るのよ!と主張してそのようにしてもらったわけです。(やらない人もいます)

 この場合の再建は、人工物(シリコン)を使った再建です。自家組織(自分のお肉)を使った再建は、また全然違った手術になります。

 再建の第一段階、というのは、シリコンを入れる前にシリコンを包むための充分な皮膚の面積を確保する目的で、ティシュー・エキスパンダーという、胸の皮膚を伸ばす器具を、大胸筋の下に埋め込む作業です。

 ですから、あたしが手術の麻酔から目覚めた時、左のおっぱいは乳首含めて確かに根こそぎなくなっていたのですが、その代わりとなるようなふくらみはもうくっついていたのです。  

「同時再建手術のメリットは、喪失感が少ない事」などとものの本にには書いてあったりしますが、まあ、そういうことは言えるかも知れない。
 「なくなっちゃったー」という思いに浸る間もなく、「もう作りかけなのよ。建設に踏み切ったのよ」という忙しさがある胸で目覚めるわけですから。

 エキスパンダーは、水を注入するバッグのようなものです。
 これに水を少しずつ注入していって、右側の健康な方の胸の、1.5倍ぐらいにまで「皮を伸ばす」。しかるのちに手術をしてエキスパンダーを取り除いてシリコンバッグを入れるのが、「第二段階」になります。

 で。あたしは今、水を注入しておっぱいの皮をぎゅいぎゅい伸ばしている段階におります。
 一ヶ月に一度、形成外科の先生のクリニックに行って、注射器で、かつて乳首があったあたりのところに針をさして、30ccとか、60ccとか、水を入れてもらっているところなの。

 昨日も行ってきたのよ。
「第二段階」は、10月の予定だから、あと少し、この”水入りおっぱい”ですごすことになります。
 これがねー。けっこう固いんだよー。

 つづく。