抗癌剤

去年の11月に、患者言葉でいうところの”地毛デビュー”を果たした時、あたしはベリーショートの金髪にしちゃった、という話のつづき。
まず、何で金髪なんかにしたか?
明日抜糸なのですが、今バッグを入れ替えた胸の下、ウエストまでのあたりに”日本地図”できてます。青タン赤タンって感じの内出血で。(笑)
これは、手術の時の内出血が「下に降りてくる」のだと、あらかじめ説明されていました。内出血が下のほうに「移動する」という言い方もされました。
ですから、「あー、あの時言ってたやつ、これか!」とわかるのです。
いやなことを考えたくない、要するに病気のことをわすれていたい、という心理から来る”選択的もの忘れ”ってのは、実は今でも続いているのですが(それでよくこんなものを書いてるな、と我ながら感心する)、そのほかにも物理的にドジ気味になる時期がありました。
化学療法・・・つまり抗癌剤を入れている期間です。
ひどかったわー。
抗癌剤の治療の影響で、爪の色が変わっているのですが、それがもうじきなくなるところまで来ました。
抗癌剤の点滴は、4クール受けたのですが、それ以降、爪にストライプ模様がついていました。
黒い色が出現し、白い爪がはさまって、また黒い色が出て、白くなって・・・・4回分、それが律儀に繰り返されました。
黒い色が出る前に白い爪が現れるのを見て、あたしは「この白いところでは、抗癌剤が体から抜けているのだろう」と思っていました。
だけど、そうではなかったみたい。
抗癌剤が終わってから約3ヶ月、新しく伸びた爪はピンク色になっていたからです。
そうよね。この色だった。
白いところも、黒いところと同様に、抗癌剤の影響が出ているってことだったんだわ。
この爪に、あたしはマニキュアなどはしないでいました。
ずっと観察していたかったからです。
バウムクーヘンみたいで、結構面白い模様でした。
このバウムクーヘン爪ともそろそろお別れです。
乳ガン患者は”基本的には”けっこう元気に見え、元気じゃない時は、『治療中』であるからして、むしろそれは前向きな時間なんだ、っていう話のつづき。
病気を持っている人が、見かけ上元気だったり元気でなかったりすることは、周りの人に多大な影響を及ぼします。
周囲の人は病気の中身なんかについては、知らないし、くわしい話なんかされてもたいがい覚えられないでしょう?
だから、その人を心配していれば、会ったりしたときに”元気”か”元気じゃない”かですべてを見てしまう、ということがあります。
だけど、それだけで判断してますとね、けっこう誤解をしちゃうのよ。
医学ってややこしいじゃん?すぐ新しくなっちゃうし。
素人って、当事者になるまで、あんまり調べたりしないから、病気に関しては、割と「誤解がいっぱい」、という状態なわけですよ。
何でこんなこと書いているかといいますとね、ある人に、こんな質問を受けたからです。
で。
金髪にする予定ってのが決まってから、あたし、思い出したわけです。
確かあたし持っていたはずだ。
”金髪スプレー”。
これは髪の毛にスプレイするだけで、いろんな色の髪の毛になれるって言うシロモノ。
髪の毛の上に付着するだけのことなんで、シャンプーで簡単に落ちるわけ。
染めることなくいろんな色が楽しめる。
演劇の人とかも使うし、パーティーでふざけた仮装をするときにも重宝なのよね。
あたしは一時期、そんなもんで髪に赤とか緑のメッシュをいれて遊んでいたわけよ。
今でも東急ハンズとかに売ってるはず。
それで、その残りがあるはずだ。
しかも金髪の。
それを使ってしゅーしゅーすれば、「金髪にするとだいたいこんな感じです」ってことがわかるんじゃん?
洗面台のガラクタをさぐること5分。
出てきました。
とっくに使用期限が過ぎてる金髪スプレイが。
生頭その後。
コハゲコウのようであった頭は、ダチョウを経て、オランウータンぐらいになってきました。
だんだん人間に近づいてきたってことであろうか。
娘と夫は
「ママもう少し顔が長くないと、サル類には見えない」
「いまいちサルとしてはいい形ではないね」
などと真剣に話し合っていたが、それは無視することにします。
「弱い野球部員」という表現もあんまり家族にはウケないかったな。あたしは運動がからきしダメなので、野球臭がしないのであろう。
だけど、「タワシになってきた」と言ったら「うんそうそう。似てる似てる」
と反応が。
何だか以前よりちょっと髪の毛が固いみたいで、わさわさっと立ち上がっているからね。(これは、薬が抜けるにつれて元に戻ることが多いらしい)
タワシといっても、あたしのは、白髪が多いから、なんか白いタワシがフライパンのススで黒く汚れてます、っていう感じなんだけど。
野球臭はないけど台所臭はするらしいぞ。
想像つきます?
で。
なんで「つわりみたいな感じ」という答え方だとちょっと困るかって話のつづき。
それは、つわりもまた、すごい個人差があるからです。その意味ではあたっているんだわよ。
だけどね。
「つわりのよう」という言葉をきいて、例えばつわりが特別つらかった女性は、ことを過大に認識してしまうんですね。
もうね。
見る間に顔が曇るから。
「何てつらい思いを・・・・二度とイヤだわ」などとおっしゃり、眼に涙が浮かぶんじゃないかしら、ってぐらい同情してくれてしまったりするんです。
あたしは別に何も大げさに言っていないのに大嘘ついてしまったぐらいの”効果”があがっちゃうから。
吐き気には個人差があるっていう話のつづき。
抗癌剤の副作用として、脱毛の次にユーメイな(?)この「吐き気」ですけれど・・・。
実はあたしは、あんまり強く出なかったんですわ。
その代わり長い。
すんごいあいまいーな吐き気がですね、だらだらだらだらと続いていたの。
繰り返しになりますけど、こういう副作用の色々は、ほんとに個人差があるんです。
だから「吐き気ってこういうもん」という話ではなくて、単なる1サンプルってことね。
あたしの場合、吐き気止めがきいているんだかいないんだか・・・・
実はガンなんです、ってことを人に話しますと、しばしばこういう反応が返って来ます。
「でも、元気ですよね」
「全然そうは見えませんね」
それから、乳ガンってものが大変増えていることの証左なんだろうけど、自分の周りの経験者のお話をしてくださる方も多いです。
「その人も乳ガンだったけど今はぴんぴんしてるよー」
「一時期は大変だったみたいだけど元気になってるよ」
そうなのよ。
確かにあたし元気です。 元気ですとも。
っていうか、乳ガン患者は、基本的には元気なんですよね。
少なくとも、周囲の目には元気に見えることが多いと思います。
それはなぜか?
あたしボケてた、って話の続き。
でも「今でもボケじゃんか。っていうかいつも?」という家族の声は無視しよう。
抗癌剤ってのは、基本的に、分裂が盛んな細胞をいじめる薬なんだそうです。
ガン細胞は、通常の細胞より分裂が盛んなので、主にそこんところを叩く!すると結果的にガンの息の根が止まる。
治療はそういうことを期待してやるわけです。
そのために、ついでに髪の毛やツメや、皮膚、粘膜など、やっぱり体のなかで活発に代謝している場所が一緒にいじめられてしまう。
それがいわゆる副作用なんですわ、と、あたしは聞かされました。
ガンを叩く、といっても、手術で病巣はすっかり取っていますから、術前にやるケースとは違って(それをやる場合もあります)、どこにガンがあるかはもうわかんないのね。
なんか、畳に隠れたダニを殺します!みたいな(このたとえでいいかな?汗)見えない世界。
見えないけど、顕微鏡で見ないとわからない、とか、顕微鏡で見てもわからないかもしれないぐらいの小さいガンの”芽”に対して、過酷な環境を与えて、育つチャンスを最大限つぶす、というのが抗癌剤治療の狙いなのです。
体っていうのは普通の細胞だっていっぱい働いておりますんで、とばっちりを受けてひどい目にあった細胞が色々と悲鳴を上げる。
だけど、お薬は、ガン細胞も普通の健康な細胞も区別はつけられないわけです。
ガンは、普通の細胞がヘンな風に突然変異を起こして(?)姿が変わって悪さをするようになったやつなんだけども、基本的に”異物”ではないんだもん。体の中の細胞の仲間なんだもん。
だから、点滴や経口で体に入れるお薬は、「ガンだけ選んできっちり攻撃しまーす」などという器用なことはできないのね。
クラスの中に不良がいても、みんな同じクラスメイトだよー、先生は差別しない!みたいなものかねえ。
差別しないで全員叩きます!特に君らのような活発に動くやつら!おい、観念しろ!ばしばしばし・・・・・(妄想中)。
で。細胞の活発なところ。髪の毛根、などがいじめられて毛が抜けます。体毛も抜けます。(まつげ、まゆげまでは来なかったけど、こういうところもすっかりやられるような強い薬もあるそうです)
ツメ、黒くなります。皮膚、ぼろぼろでシミが浮き出し、粘膜関係総じて不調。口の中が変。視力が落ちる。
体の”原材料”である血液もおかしくなってます。
白血球が減る。だから、抵抗力が落ちて、病気に感染しやすくなり、治りにくくなるといわれています。
そのため、ちょっとした風邪などでひどい症状に見舞われる人も出てきます。
このことはずいぶん脅かされました。(あたしはセーフでしたが)
吐き気もありました。
ただし、これにはかなりの個人差があるようで・・・。
つづく
抗癌剤のことについて忘れないうちに書いておこうかと思います。
あたしは化学療法(ECを3週間に一回×4クール)はもう終わってまして、今はホルモン療法に入っています。
その後血液検査で異常がなかったんで、ノルバデックスっていうかなり一般的なお薬を1日1錠のむ(だけ)という生活になっております。
ホルモン療法の他は切った方の乳房の再建をしてる途中。
あたしはこれも治療の一環と思ってます。(保険きかないけど。ぷんぷん)再建については稿を改めて書きます。
抗癌剤は今だんだん体から抜けてるところなんで、やっぱり日に日に元気になっていくというか・・・・あらためて、あれが体に入っている間はフツーじゃなかったのだにゃあ、と感じています。
入っている時は、いまいち頭がぼけてたんで(あたしの場合)、どこがどう不調かってことについても、あんまりよく認識していなかったんだわよ。
脱毛を別にすれば、なんか、”あいまいな”副作用”だったからねー。
あいまいなんだけど、確かにあたしゃ「具合悪ーい」状態だったわけね。
ただでさえ低値安定の生産性がさらにどどーん、と下がっていたから。
もうね、携帯でメール打つとか、そんなこともできなくなってたですね。集中力が落ちて。
打ってる途中で気絶してたから。
携帯片手に気絶。
ふっと眠りに入ってしまう。
(それで気がついたんだけど、あの作業って絶対ストレスかかるよ)
つづく。